サマリー
イギリスの労働党とアメリカのドナルド・トランプ、対極に見えるこの二つの政治勢力は、どちらも経済政策において失敗する運命にある。労働党は「管理されたセンシブルな経済政策(managed sensibilism)」を掲げ、わずかに税を増やし、投資を拡大することで経済成長を目指す。しかし、これはアメリカやドイツで既に試され、失敗している。一方、トランプの政策は移民制限と関税の導入に重点を置いているが、実際には経済の実情と乖離しており、結果的に失敗すると考えられる。結局、両者ともに根本的な問題である「富の不均衡」に目を向けず、格差が拡大し続ける限り、人々の生活水準は低下し続けるのだ。
考察
労働党の「管理されたセンシブルな経済政策」はなぜ失敗するのか?
労働党の経済政策は、借入・税収増・投資を少しずつ増やすというものだ。表面上は理にかなっているように見えるが、問題はすでにアメリカやドイツで同様の政策が試され、効果を上げなかった点にある。バイデン政権下のアメリカではGDPは成長したが、庶民の生活は苦しくなり、政権支持率は低下。つまり、大きな経済指標が改善しても、それが一般市民の暮らしに結びつかない場合、政策は失敗とみなされるのだ。
また、労働党は経済成長の鍵を「投資の増加」と考えているが、現実問題として政府が投資を増やすにはリソースが必要だ。そのリソースはすでに富裕層の手に渡っており、労働党は彼らへの課税を避けているため、必要な財源を確保できない。結果的に、労働者への増税や借入に頼るしかなく、経済成長が起きないまま庶民の負担だけが増すことになる。
トランプの「アメリカ第一主義」もまた失敗する理由
一方、トランプの経済政策は、移民制限と関税の強化に依存している。しかし、イギリスの保守党政権が移民制限を掲げながら実際には移民を増やしていたように、トランプも実際に移民を減らすことは難しい。なぜなら、多くの産業(農業や低賃金労働)で移民労働力が不可欠になっているからだ。仮に強引に移民を減らせば、人手不足が深刻化し、経済の停滞を招く可能性が高い。
また、関税についても、日本や韓国、台湾が成功した事例があるものの、それは特定の産業に対して戦略的に適用された場合に限る。トランプが広範囲に関税をかけると、輸入コストが上がり、最終的に物価高騰を引き起こし、庶民の生活を圧迫する結果となる。
最大の問題は「格差の拡大」
労働党もトランプも、それぞれ異なる政策を掲げているが、どちらも「格差の拡大」という最大の問題を見落としている。過去20年間、右派・左派を問わず各国の政権が経済政策を実施してきたが、そのたびに富裕層はさらに裕福になり、庶民の生活水準は下がり続けてきた。経済成長の数字が改善しても、庶民の暮らしが良くならなければ意味がない。結局、現代の経済問題の本質は「右か左か」というイデオロギーの問題ではなく、「富の再分配」の問題にあるのだ。
結論
労働党もトランプも、それぞれ異なる立場から経済政策を提案しているが、どちらも失敗する可能性が高い。その理由は、どちらも根本的な「富の格差の拡大」に対処しようとしていないからだ。労働党は「経済成長がすべてを解決する」と考え、トランプは「移民や外国との競争を制限すれば解決する」と考えているが、いずれも本質的な解決策ではない。
現代の政治・経済を読み解くカギは、「どの政策がどの党から出されるか」ではなく、「誰が得をし、誰が損をするのか」を見ることにある。政治的なイデオロギーに囚われず、実際にお金の流れを追うことが、より良い未来を築く第一歩になる。
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